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専門家コラム

25年の金利の見通し

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吉崎 誠二

COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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不動産投資に大きな影響を与える金利。2024年は16年ぶりに「金利がある状態」となり、普通預金の金利も多少上昇しました。短期金利は変動金利に影響がありますが、長期金利は固定金利だけでなく、不動産投資における還元利回り(あるいは期待利回り)にも影響があります。今回の原稿では、2024年の金利の動向を振り返りつつ、2025年の見通しについて考察して参ります。

目次
24年後半は「金利のある世界」に戻る
政策金利の上昇と変動金利
長期国債金利と固定金利の動向

24年後半は「金利のある世界」に戻る

2024年は、不動産市況に大きな影響を与える金融政策に大きな変更がありました。3月にはマイナス金利が解除され、政策金利(の誘導目標)が0%となりました。また、7月末の日銀金融政策決定会合では、政策金利が0.25%となり、2008年12月以来、約16年ぶりに「金利のある状態」となりました。
政策金利の上昇は短期プライムレートの上昇、そして変動金利の上昇へとつながるのが常ですが、店頭金利(基準金利)では多少の上昇気配は見られたものの、実際の借入金利ではそれほど大きな動きはありませんでした。

政策金利の上昇と変動金利

先に述べたように、政策金利の上昇は短期プライムレートの上昇となり、順当ならば変動金利の上昇へとつながります。しかし、大手銀行の住宅ローンの変動金利の状況を見れば、基準金利はそれまでしばらくの間2.475%が続いていましたが、10月以降は2.625%と0.15%上昇しました。一方、実際の借入金利は基準金利から「優遇分」を引いて0.375%~0.4%台と大きな変化なく推移しています。その後、政策金利は10月、そして12月18日から19日にかけての日銀金融政策決定会合でも据え置きとなっています。
2024年中に政策金利は多少上がりましたが、「理論上の政策金利=自然利子率+予想インフレ率」と比べれば、まだ低い状況です。
ここでいう自然利子率とは、経済・物価に対して引締め的でも緩和的でもない、景気に中立的な実質金利のことです。内閣府が2023年に示した潜在成長率を自然利子率に適用すれば0.5%前後、最近のいくつかのシンクタンクの公表数字では-0.5~0.5%の範囲となっています。
予想インフレ率は、「日銀展望リポート」(最新2024年10月公表)によれば、2024年のインフレ率見通し(コア:前年比)は2.5%、2025年は2.1%、2026年は1.9%となっており、インフレ率見通しをざっくり2%とすれば、理論上の政策金利は1.5%~2.5%となります。こう考えれば、現在もかなりの「金融緩和状態」にあることが分かります。そのため、今後の経済状況次第ですが、2025年の間に1%程度までの上昇可能性はあると見ておいてもよいかもしれません。
シンクタンクの予想などを見ていると、2025年中に2回の利上げ(0.25%ずつ)という見解が多く見られます。この予測に従えば、2025年中には政策金利は0.75%に達することになります。しかし、それでも前述のように理論上で考えれば、まだ「金融緩和」が続くこととなります。ただし、ムードには変化が見られるかもしれません。

長期国債金利と固定金利の動向

7月の決定では、国債の買い入れ額を減額することが決まり、月6兆円から段階的に3兆円にすることとなりました。これまで日銀は国債を買い入れることで国債金利の上昇を抑えてきましたが、徐々に市場に任せる方向へ舵を切り始めました。これにより、長期(10年)国債金利は大きく上昇する可能性が広がりました。
10年物国債(長期国債)の金利は、2024年年始には0.6%程度で推移していましたが、12月半ば(執筆時点)には1.06%程度で推移しています。大きく上昇とまではいかないものの、概ね0.4%程度の上昇ということになります。6月から7月頃には1.1%付近で推移していましたが、その後低下し、1.1%を下回る水準で推移しています。
住宅ローンの固定金利の動向を住宅金融支援機構のフラット35の金利動向(最頻値)で見てみると、2024年1月は1.87%、12月は1.86%となっており、長期国債金利は前述の通りこの間に0.4%程度上昇していますが、フラット35の金利はほぼ横ばいです。ただ、2022年1月時点では1.3%だったことを考えると、この3年弱で0.5%以上上昇しています。
日銀による国債の買い入れが減少した場合、買い手がいなければ国債金利は上昇します。徐々に日銀は買い入れ額を減少するとしていますので、国債金利が緩やかに上昇する可能性があります。ただ、このところの長期国債先物の動向を見る限り、まだ大きな動きは見られません。しかし、米国の金融政策の動向の影響も受けるため、2025年に入ると大きな変化があるかもしれません。今後の動向を注視しておきたいところです。

ご留意事項
不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
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本マーケットレポートに掲載されている情報は、2025年1⽉16⽇時点公表分です。
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