市況・マーケット
~東急リバブル不動産鑑定士が見る~「令和7年 地価公示」
2025年4月22日
「令和7年地価公示」(令和7年1月1日時点の土地価格)が国土交通省より3月19日に発表されました。
【まとめ】
全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し上昇幅が拡大ました。
三大都市圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大しました。
東京圏及び大阪圏では上昇幅の拡大傾向が継続していますが、名古屋圏では上昇幅がやや縮小しました。
地方圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇しました。
地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)では上昇幅がやや縮小しましたが、その他の地域では概ね拡大傾向が継続しています。
※地価公示は1月1日時点の価格であり、直近の経済環境の変化などは反映されていません。
Ⅰ.令和7年地価公示の概要
令和7年 | 住宅地(前年) | 商業地(前年) |
---|---|---|
全国 | + 2.1%(+ 2.0%) | + 3.9%(+ 3.1%) |
三大都市圏 | + 3.3%(+ 2.8%) | + 7.1%(+ 5.2%) |
東京圏 | + 4.2%(+ 3.4%) | + 8.2%(+ 5.6%) |
大阪圏 | + 2.1%(+ 1.5%) | + 6.7%(+ 5.1%) |
名古屋圏 | + 2.3%(+ 2.8%) | + 3.8%(+ 4.3%) |
地方圏 | + 1.0%(+ 1.2%) | + 1.6%(+ 1.5%) |
- 東京圏:
- 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県内の首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町村の区域
- 大阪圏:
- 大阪府、兵庫県、京都府、奈良県内近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域
- 名古屋圏:
- 愛知県、三重県内の中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域
- 地方圏:
- 三大都市圏を除く地域
地価公示とは
地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示(令和7年地価公示では、26,000地点で実施)するもので、社会・経済活動についての制度インフラとなっています。
※福島第一原子力発電所の事故の影響による 6 地点及び令和 6 年能登半島地震の影響による 1 地点の計 437 地点について調査を休止しています。
Ⅱ.トピックス
(1)全国上昇率トップは北海道の二市
全国の住宅地で上昇率1位となったのは北海道・富良野市(標準地番号:富良野-4)で、上昇率は前年比+31.3%となりました。
富良野市は上質なパウダースノーを誇るスキーリゾートとして国際的な知名度が高く、近年、海外富裕層を中心とした別荘需要が顕著に増加しています。
特に、長期滞在型の需要や、自然豊かな環境を求める層からの関心が高まっており、それが地価を押し上げる要因となっています。
また、周辺の自然景観やアクティビティの豊富さも、その魅力を高めています。
商業地の上昇率1位は北海道・千歳市(標準地番号:千歳5-4)で前年比+48.8%、2位、3位も北海道・千歳市となりました。
千歳市は自衛隊や空港関係者を中心とする安定した住宅需要により、地価は堅調に推移していましたが大手半導体メーカーの進出を契機として、関連企業やサプライヤーの進出、従業員の増加が見込まれ、賃貸マンション用地だけでなく、オフィス、ホテル、商業施設の用地需要が急速に拡大しています。
(2)半導体関連地域の地価高騰
千歳市と同様に、大規模な半導体工場の新設や進出が決定した地域では、共通して地価の顕著な上昇が見られます。
熊本県菊池郡もその一つであり、雇用増、住宅需要、商業施設の進出、インフラ整備への期待、そして関連投資の活発化が地価を押し上げる構造となっています。
これらの地域では、単に工場の建設用地だけでなく、従業員の居住エリアや生活を支える商業地の需要も高まっており、広範囲にわたる地価上昇の波及効果が確認されています。
(3)観光地の回復と再開発
白馬村のような国際的なスノーリゾート地では、外国人観光客(インバウンド)が急速に回復しています。
これにより、宿泊施設や飲食店などの商業地の需要が再び活況を呈し、周辺の住宅地の別荘需要や賃貸需要も増加しています。
東京都心部では、大規模な再開発プロジェクトが相次いで進行しており、これらの地域では集客力の向上や新たなビジネス拠点の創出への期待から、商業地を中心に地価が大きく上昇しています。
(4)交通利便性や生活利便性に優れた地域
交通利便性や商業施設、教育機関などが充実し、生活しやすい郊外エリアでは、転入者の増加を背景に堅調な住宅需要が続いており、地価も比較的高い水準で上昇しています。
特に、千葉県流山市の流山おおたかの森駅周辺は、つくばエクスプレスの開通により都心へのアクセスが向上したことに加え、子育て支援策の充実などが評価され、ファミリー層を中心に人気が高まっています。
(5)住宅地・商業地の最高価格
全国の住宅地の最高価格地点は東京都港区赤坂1丁目(標準地番号:港-4)で、価格は5,900,000円/㎡、上昇率は前年比+10.3%となりました。
一方、商業地の最高価格地点は東京都中央区銀座4丁目(標準地番号:中央5-22)で、価格は60,500,000円/㎡、上昇率は前年比+8.6%となりました。