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札幌市の不動産市場動向|現状分析と今後の見通し

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札幌市の不動産市場動向|現状分析と今後の見通し

札幌市は三大都市圏に次ぐ重要都市圏を形成しており、令和6年の地価公示では全用途平均9.1%の上昇率となり、現在も都心部において再開発事業が継続しています。2024年6月には金融庁より「金融・資産運用特区」の対象地域として指定を受け、高い注目を集める都市圏となっています。
この記事では札幌市の不動産市場について、現状の分析を踏まえ今後の見通しを解説します。

目次

  1. 札幌市のオフィス市場動向
    1. オフィスビル|売買市場の動き
    2. オフィスビル|賃貸市場の動き
    3. 注目を集めるエリア
  2. 札幌市のマンション市場動向
    1. マンション|売買市場の動き
    2. マンション|賃貸市場の動き
    3. 注目を集めるエリア
  3. オフィスとマンションの変動要因(見通し)
    1. 札幌市の経済成長を促す要素
    2. オフィス需要が拡大する
    3. 流入人口が増加しマンション需要も拡大する
  4. 札幌市の不動産市場は活況の中にも不安材料が
札幌市のオフィス市場動向

札幌市は北海道経済の中心であり、道内の有力企業が本社をかまえ、大企業の支社・支店も多く進出する北日本の一大ビジネス拠点となっています。札幌ビジネス地区は、札幌駅南口から大通公園を越え南に1.4kmほどの国道36号線までつづく「札幌駅前通り」がメインのゾーンになっており、再開発事業の大きなプロジェクトもこのゾーンで現在も継続されています。

札幌市のオフィス市場におけるビルの売買状況は活発です。札幌駅前や大通公園のビジネス地区での再開発につづき、中心部の既存ビルの売買も目立っています。

たとえば「第一三共札幌支店ビル」(約40億円)や、北海道が所有する「プレスト1・7」の不動産信託受益権(約30億円)などが地元企業により取得されており、増加するオフィス需要を見込んだ積極的な投資が行われています。

札幌市に存在するオフィスビルの正確な資産額は不明ですが、J-REITの保有不動産額から推定すると約1,400億円程度のビルが存在すると考えられ、アセットマネジメント力に長けた、より収益性を高めた運用ノウハウを有する企業によるM&A的な買収も多くなっているようです。

日本不動産研究所の「不動産投資家調査」によると、札幌市のAクラスオフィスの期待利回りは現在4.9%となっており仙台市や広島市よりも低く、今後10年間はこの水準を維持すると予想されています。首都圏の物件価格が上昇する中、地方都市圏にも投資家の目が向けられていると言えるでしょう。

札幌市のオフィス空室率は1年ほど前まで遡ると、2024年7月までは3%前後となっていました。しかし2024年8月には新築ビルの供給により、空室率が上昇し10月には4.23%となりました。その後はオフィス回帰の流れによる大型成約がつづき、2024年12月には3.7%まで低下しています。

以下のグラフが示すように、ここ1年の推移は4%前後での推移となっており、おおむね堅調と言える状況です。背景には札幌市においてもオフィス回帰が進んでいることがあげられます。とくに空室率が低い地区は「駅前東西地区」(1.70%)、次いで「駅前通・大通公園地区」(3.66%)となっています。

札幌オフィス平均空室率推移

出典:三鬼商事「オフィスマーケット」より作成

賃料は空室率低下により上昇しており、もっとも高いのは「駅前通・大通公園地区」の13,861円/坪で、次いで高いのが「北口地区」の13,755円/坪となっています。

「北口地区」は空室率が高いにもかかわらず、賃料が高い水準となっているのは、新築ビルの供給が多かったことが反映されています。

賃料のもっとも低い地区は「創成川東・西11丁目近辺地区」ですが、最近のデータでは上昇率が高くなっています。

創成川東地区は再開発による新規供給があったエリアですが、これまで創成川の西側と比べ規模の小さな古いビルが多い地区でした。開発によりビジネス街としての認識も高まり、前年比上昇率7.4%は他の地区を抜いてもっとも高くなっています。

札幌ビジネス地区では札幌駅周辺において再開発が行われており、大型のオフィスビル供給が予定されています。

北5条西1・西2地区には、地上43階の複合ビル(延床面積約116,000坪)が2028年完成予定であり、北海道新幹線札幌延伸計画に合わせた再開発です。北4西3地区の計画は地上33階の複合ビル(延床面積約38,000坪)で、これも2028年完成予定となっています。

両地区における再開発により札幌駅南口周辺は一新され、新幹線延伸が実現するとより大きな成長が期待されています。

札幌駅周辺につづいて注目されるのが大通公園地区です。大通西4南地区再開発においては、地上36階の複合ビル(延床面積約25,000坪)が2028年完成予定となっています。オフィス、商業施設に加え、高級ホテルブランド「パークハイアット」の開業が予定されており、国際都市札幌を象徴するランドマークとして期待されています。

札幌市のマンション市場動向

札幌市はわずかに人口減少が生じていますが世帯数は伸びており、賃貸マンション需要は活発です。ここでは賃貸マンションの売買市場と賃貸市場の現状をみていきます。

札幌市の賃貸マンション総数は明確ではありませんが、J-REITのマンション保有不動産額から推定すると約600億円程度と思われます。

一方、流通市場における1棟マンション売買状況を、公的データから推計すると年間約360億円程度が売買されています。

下図は「不動産情報ライブラリ」から、2023年第1四半期~2024年第2四半期のマンション売買総額と件数をグラフにしたものです。四半期ごとに50~100億円の売買が行われていることが読み取れます。

1棟マンション売買量推移

出典:不動産情報ライブラリ「不動産価格(取引価格・成約価格)情報の検索・ダウンロード」より作成

現在、札幌市では流通市場やJ-REIT以外に、マンション売買を活性化させる新たな仕組みが生まれています。

投資法人「北海道リート」が2024年2月に運用開始され、投資家からの資金を集めて北海道内のオフィス、マンション、商業施設などを取得し、資産運用会社「北海道アセットマネジメント」に業務委託するスキームが作られました。

北海道リートは2026年には資産規模250億円を目指しており、マンション売買市場における大きなプレーヤーになると思われます。

一方、マンションの売買動向で注目したいのは、居住用マンションではなく宿泊用マンションとしての物件売買です。

インバウンドの回復・拡大により宿泊施設の不足が指摘されていますが、札幌市においては民泊の届出数が急増しています。

国の外国人観光客数の目標は2030年に6,000万人としており、2024年実績の6割増となるわけで、宿泊施設不足は今後の深刻な課題となります。

そのような面から、賃貸マンション投資の対象として「民泊」は大きな選択肢となる可能性があるでしょう。

札幌市における民泊届出数推移

出典:札幌市「札幌市内の民泊施設一覧」より作成

札幌市の賃貸マンション市場の現状をみていきますが、まず札幌市の人口・世帯数の動向について確認します。

札幌市は人口減少となっていますが世帯数は増加しています。同市は将来推計を発表しており、その結果は2030年に世帯数のピークを迎えるとの予測です。

世帯数の増加により住宅需要も増加し、比例して賃貸需要も増加するでしょう。一方、65歳以上の単独世帯の増加は2030年以降もつづき、高齢者を対象とする賃貸住宅の課題がますます大きくなると思われます。

札幌市の一般世帯数の推計

出典:札幌市「将来推計人口・世帯数」より作成

賃貸需要が拡大する世帯数増加の一因として、転入超過も大きなポイントです。札幌市全体の転入超過は2019~2021年の期間、コロナ禍の影響か減少傾向となっていましたが、2022年からは増加し2024年は2019年比25%の増加となっています。

2024年の増加率が非常に高く、2025年以降の推移に注目する必要があるでしょう。

札幌市転入超過数

出典:札幌市「人口動態」より作成

札幌市の賃料水準についても確認しておきます。2025年1月21日のデータでは、9区のm²あたりの平均賃料は1,205円であり、最高は中央区の1,534円、最低は南区の1,012円となっています。

2024年は賃料値上げの傾向が強く1年間で10%の値上げとなった事例もあります。とくにファミリータイプは2023年第4四半期から急上昇していますが、単身向けはほぼ横ばいとなっており、タイプにより大きく異なっていることが覗えます。

札幌市には副都心として開発された「新札幌」エリアがあります。令和6年の地価公示では432,000円/m²と、前年比13.7%の上昇となり市内の地価ランキングで8位の高さとなっています。

1975年に開発がはじまり副都心機能を持つエリアとして期待されましたが、既存住宅地との権利調整などの問題もありました。しかし2019年から再開発事業がスタートし2023年には全施設が完成しています。

新札幌は新千歳空港までJR乗車で約40分とアクセスがよく、隣接する北広島市や江別市を含めた札幌市東部の拠点となっています。また新札幌のある「厚別区」は平坦な土地が多く良好な住宅地が広がり、賃貸マンションの平均賃料m2単価は中央区に次ぐ第2位の高さとなっています。新札幌エリアは賃貸マンション事業にとって注目されるエリアと言えるでしょう。

札幌市各区の平均賃料

出典:ハトマークサイト「全国統計データ」より作成

札幌市のオフィス、マンション市場の概観について述べてきましたが、ここからは今後の札幌不動産市場の見通しについて解説します。

札幌市は北海道とともに「国家戦略特区」に指定されています。並びに「GX金融・資産運用特区」として札幌市が指定され、金融及び資産運用会社の新規参入や業務拡充により、アジアにおける世界的な金融センターを目指すとしています。

そのため、札幌市には国内外からの投資資金が集まるようになり、オフィス需要や住宅需要に対応した投資が活発に行われることになるでしょう。

また北海道全域では、GXに関する産業のサプライチェーン構築が図られ、再生エネルギー供給基地を目指す動きが活発になります。供給基地周辺での雇用創出はもちろん、管理拠点となる札幌市においても雇用が活発となり、高機能なオフィスやマンションの供給が必要となるでしょう。

2024年に運用開始された「北海道リート」が果たす役割も大きなものになります。当面は、オフィス・マンション・商業施設の6物件80億円の取得を目指していますが、2026年までには3倍以上の資産規模を目指しており、地元企業や自治体などが所有する不動産のCRE戦略支援も期待されています。

また札幌市都心部の再開発や、地方都市のコンパクトシティ化の促進にも、資金面での支援が期待されます。

一方、札幌市でつづいている再開発事業は、2030年を予定していた北海道新幹線札幌延伸を折り込んでいた一面もあり、札幌延伸が未定のままでは、オフィスやテナントの募集スケジュールが確定できないなど、懸念があることにも着目しておく必要がありそうです。

上記の「GX金融・資産運用特区」指定により、札幌市におけるオフィス需要は拡大すると予想されます。海外の資産運用会社やGX事業を行う企業の誘致が強化されるとともに、スタートアップ企業の創出や育成強化が図られます。

具体的施策として、法人を対象とした税制優遇策が図られ、外国人ビジネスワーカーを対象とした行政手続き関連の規制緩和策が実施され、海外から札幌市への進出を促進させる取り組みが予定されています。

札幌市への企業の集積はGX金融・資産運用関係に留まらず、千歳市に進出した半導体メーカー「ラピダス」の試作ライン稼働により、関連する企業にもビジネスチャンスが生じると考えられます。

事業所の設置や既存事業所の拡大などにより、札幌市におけるオフィス需要をさらに押し上げる可能性もあるでしょう。

このようなオフィス需要の拡大に対応する施策として、容積率の緩和などの行政措置も予定されており、効率の高い開発事業が可能になると考えられます。

国内外から企業が札幌市に集積すると、さまざまなビジネスチャンスが生じ、さらに企業が増加する流れが生じます。そのため札幌市への流入人口は現在の水準を超えた規模になる可能性があり、マンション需要は大幅に拡大するでしょう。

札幌市への企業の集積は、すでに述べた「GX金融・資産運用特区」による影響が期待できますが、もう1つのポイントとして「観光と食」をテーマとする、札幌市の第2次産業振興ビジョンをあげることができます。

北海道は魅力のある観光資源が豊富であり、札幌市はその拠点としてのポジションを確立しています。インバウンドによる観光客の増加により、観光や食に関わる人材の確保は重要な課題となり、受入れ体制の1つである質の高い住まいへの需要が増加すると考えられます。

札幌市の不動産市場は「GX金融・資産運用特区」指定と、近郊の千歳市における「ラピダス」の稼働開始、さらに「北海道リート」の運用など、産業振興が大きく期待できる状況となっています。

加えてインバウンドの拡大が観光・飲食・宿泊などの業界を押し上げ、オフィス・マンション市場は活況を呈すると期待されます。

また、地方創生を主要な政策として掲げる新政権が誕生し、主要な中核都市である札幌市は2024年に策定した第2次産業振興ビジョンを、さらに確実なものにする可能性が高いと言えるでしょう。

一方で2030年の予定であった北海道新幹線札幌駅の開業が延期され、見通しが立たない状態がつづくと、再開発事業にも影響を与える可能性が懸念材料となっています。

一級建築士、宅地建物取引士
弘中 純一 氏
Junichi Hironaka

国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にてコンクリート系工業化住宅システムの研究開発に従事、その後工業化技術開発を主体とした建築士事務所に勤務。資格取得後独立自営により建築士事務所を立ち上げ、住宅の設計・施工・アフターと一連の業務に従事し、不動産流通事業にも携わり多数のクライアントに対するコンサルティングサービスを提供。現在は不動産購入・投資を検討する顧客へのコンサルティングと、各種Webサイトにおいて不動産関連の執筆実績を持つ。

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