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法人の事業用不動産売却における税金と特例・制度

事業用不動産

税金・コスト

法人の事業用不動産売却における税金と特例・制度

法人が事業用不動産を売却する際には、いくつかの税金が関わってきます。あらかじめ内容を理解しておくことで、より適切な事業計画や投資判断に繋がるでしょう。
また、不動産売却にかかる税金には、さまざまな特例制度が設けられており、税金の仕組みを把握し、これらの制度をうまく活用することで、税負担を軽減できる場合もあります。
この記事では、法人が事業用不動産を売却する際に考慮すべき主な税金の種類、活用可能な特例制度、そして税金以外にかかる諸費用について、わかりやすく解説します。

目次

  1. 事業用不動産を売却したときにかかる税金の種類
    1. 利益に基づいて課される税金
    2. 取引(行為)にかかる税金
    3. その他、不動産売却にかかる費用
  2. 税金計算における注意点
  3. 活用できる特例や制度
    1. 事業用資産の買換えの特例
    2. 取得土地などの譲渡益にかかる1,000万円特別控除
    3. 公共事業のための譲渡にかかる税負担軽減の特例
  4. 税負担を軽減する戦略的なアプローチ
  5. 税金への理解が不動産売却の成否にも影響する
事業用不動産を売却したときにかかる税金の種類

法人の不動産売却益への課税について、個人との違いを理解することが重要です。

個人の場合、不動産売却益は「譲渡所得」として分離課税となり、所有期間による税率の変動があります。一方、法人の場合は損益通算と言い、売却益はほかの事業損益と合算したうえで「法人全体の所得」として、法人税などが課されます。不動産の所有期間においても、個人のケースとは異なり、対象不動産の所有期間が短期か長期かによって税率が変わることはありません。

法人が事業用不動産を売却する際の税金について、種類と特徴を以下の表で整理します。

税金の分類 税金名 課税対象 計算式・計算方法
利益に基づく 法人税 不動産売却益を含む法人の各事業年度の所得 課税所得 × 税率
法人事業税 法人の所得 課税所得 × 税率
法人住民税 法人税割と均等割の合計額 (法人税額 × 法人税割税率) + 均等割
地方法人税 法人税額 × 10.3%
取引にかかる 消費税 売却する建物の価格 建物売却価格 × 10%
印紙税 不動産売買契約書記載の金額 契約金額に応じて定められた税額
登録免許税 不動産の登記手続き 抵当権抹消の場合不動産の個数 × 1,000円

※なお、本記事に記載の税率や制度は作成時点(2025年5月現在)のものです。税制は改正される可能性がありますので、実際の取引にあたっては、最新の税率や制度を税理士などの専門家にご確認ください。

まず、不動産売却益を含む会社全体の「利益(所得)」に応じて課される税金について、詳しく解説します。

法人税

法人税は、法人の各事業年度の所得(益金-損金)に課される国税です。不動産売却益も益金として法人全体の所得に含まれます。

税率は原則23.2%ですが、資本金1億円以下などの中小法人には年所得800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用され、超過分の税率は23.2%となります。要件や税率は変更の可能性もあるため確認が必要です。

出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」

法人事業税

法人事業税は、法人の所得に対し、事業所のある都道府県が課税する地方税です。

税率は自治体、法人の資本金や所得などで大きく異なります。多くは所得に応じた段階税率ですが、超過課税や不均一課税を適用する自治体もあります。資本金1億円超の法人などに適用される外形標準課税では、所得以外の要素も税額計算に含まれる点に注意が必要です。

法人住民税

法人住民税は、法人税割と均等割の合計額を納付する地方税で、都道府県と市区町村から課税されます。

法人税割は法人税額を基に計算されるため、課税所得が赤字なら基本的に発生しませんが、均等割は資本金などの規模に応じた固定額のため、赤字でも均等割分の負担は生じます。

地方法人税

地方法人税は、法人税額に税率を乗じて計算される国税で、現在の税率は一律10.3%です。法人税とセットで申告・納付します。

出典:総務省「地方法人税(国税)」

利益の有無にかかわらず、売買という「行為」自体や契約・登記などの手続きに対して課される税金について、それぞれ解説します。

消費税

不動産売却では建物のみ10%課税(土地は非課税)され、課税事業者である売主が納付します。

土地と建物を一括売却する時は、契約書で土地・建物の価格を按分して明記するのが一般的で、価格は固定資産税評価額などを基にして按分します。土地は非課税である一方、建物は課税対象となることから、価格内訳で消費税額が変わります。そのため、契約前の検討・協議が重要です。

印紙税

不動産売買契約書等の作成時に課税されるもので、契約金額に応じた収入印紙を原本に貼付・消印して納税します。

印紙税の税額は契約金額に応じた段階税率ですが、令和9年 (2027年) 3月31日までは不動産売買契約書に軽減措置が適用されます。貼付漏れなどは最大で3倍の過怠税の対象となるため注意が必要です。

登録免許税

登録免許税は、登記時に課される税金です。所有権移転登記分は通常買主負担ですが、売却物件に抵当権があれば、その抹消登記の登録免許税は売主負担です。

抵当権抹消登記の税額は、不動産1個(土地1筆、建物1個など)につき1,000円で、土地と建物なら計2,000円、マンションなどでは個数が増えます。また、1申請あたりの上限額は20,000円と定められています。

土地譲渡益への重課税

かつて法人の土地譲渡益には、通常の法人税などに加え重課税がありましたが、この制度は現在適用が停止されています(令和8年 (2026年) 3月31日まで)。

停止期間中は追加的な税負担はなく、通常の法人税などの枠組みで課税されるため、土地売却の税務ハードルは下がっています。ただし、将来的に停止措置が解除される可能性もあるため、最新の情報を確認しておきましょう。

出典:国土交通省「土地税制 土地の譲渡に係る税制」

事業用不動産の売却に際しては、売買代金以外にもさまざまな費用が発生します。これらの費用は、一般的に譲渡費用として売却収入から控除することが可能です。

仲介手数料

仲介手数料は、不動産会社への売買仲介に対する成功報酬で、多くの場合「(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税」で計算することができます。

司法書士報酬

司法書士報酬は、登記手続きを司法書士に依頼する際の報酬です。報酬額は依頼内容や司法書士により異なり、抵当権抹消の相場は約1万円〜2万円程度です。

測量費用

測量費用は、土地の正確な境界を確定させる「確定測量」が必要な場合に発生し、土地の状況により大きく変動するため、数十万円以上かかることも珍しくありません。

不動産鑑定費用

不動産鑑定費用は、売却価格の妥当性や適正時価を把握するために不動産鑑定士に依頼する費用で、物件によりますが、数十万円程度が一般的です。

移転・不用品処分費用

売却に伴う事務所・工場などの移転費用や、不要な設備・什器などの撤去・処分費用も必要です。産業廃棄物処理や残置物処理費用は高額になることもあるため、計画的に予算化しましょう。

上記以外にも、建物の解体、土壌汚染調査・対策、アスベスト調査・除去などの費用が状況に応じて発生します。

不動産売却にかかる諸費用は、高額になるケースがあり、売却による手取り額や最終的な譲渡損益にも大きな影響を与えます。事前に見積もりを取得し、予算計画に織り込むとともに、譲渡費用として損金算入できるかを確認しておきましょう。

税金計算における注意点

法人の不動産売却時における税金計算では、前述の損益通算のほか、押さえておきたい特徴があります。適切な税務処理のためにポイントを押さえておきましょう。

まず重要なのは、売却益をいつ計上するかという問題です。原則として、不動産の引き渡し日に売却益を計上しますが、継続適応などを条件に契約日を基準にすることも可能です。

なぜ計上タイミングが重要なのかと言うと、決算期末に取引を行う場合、どちらの基準を採用するかによって、税金の支払いタイミングを調整できるからです。翌期に税負担を先送りできる可能性もあるため、自社の状況に合わせて慎重に判断する必要があります。

第二に注意すべきなのは、取引相手と売却価格です。通常の第三者との取引と異なり、グループ会社や役員との取引では特別な税制が適用されることがあります。

例えば、100%子会社など完全に支配しているグループ会社との間で土地を売買する場合、「グループ法人税制」が適用されます。この制度では、売却で生じた利益や損失をすぐには計上せず、その資産がグループ外部に売却されるまで繰り延べることになります。グループ内での利益操作を防ぐためのルールですが、通常より税務処理が複雑になるため注意が必要です。

さらに、役員や関連会社に市場価格よりも安く不動産を売却する場合は、とくに注意が必要です。税務署は、実際の売却価格にかかわらず「時価」で取引したものとみなします。時価との差額は、法人にとっては寄付金、役員にとっては給与として扱われ、思わぬ税負担が生じる可能性も否定できません。

例えば、時価1億円の土地を6,000万円で役員に売却した場合、差額の4,000万円が問題となります。この差額が寄付金とされれば法人税が増加し、役員給与とされれば役員個人の所得税にも影響します。このような事態を避けるためにも、適正な価格での取引が不可欠です。

このように、法人の不動産売却では、売却益の計上タイミング、取引相手、価格設定など、多角的な検討が必要です。税務リスクを最小限に抑えるためにも、専門家と相談しながら慎重に進めるのがよいでしょう。

また、譲渡損益の計算や低額譲渡の判定で鍵となる「簿価」と「時価」のふたつの言葉についても、基本的な意味を確認しておきましょう。

簿価とは、会社の帳簿に記録されている資産の価値のことです。土地は通常、購入したときの値段がそのまま帳簿に載っています。建物の場合は、購入価格から、毎年の減価償却(価値の減少分を経費として計上すること)によって減った分を差し引いた後の金額(未償却残高)が載っています。不動産を売ったときの利益や損失は、基本的に「売却価格 -(簿価 + 譲渡費用)」で計算します。

時価とは、その時点で、公平な市場で取引されるとしたら成立するであろう価格のことです。不動産の場合、実際の取引事例や、不動産鑑定士による鑑定評価額などが参考にされます。市場価格がはっきりしない場合でも、専門家などが状況に応じて適切に算定した価格が用いられます。低額譲渡と判断されないためには、客観的な根拠のある価格設定が重要です。

出典:国税庁「第2款 固定資産の譲渡等に係る収益 (固定資産の譲渡に係る収益の帰属の時期)」

出典:国税庁「No.6321 法人の役員に対する贈与・低額譲渡の取扱い」

活用できる特例や制度

法人が事業用不動産を売却する際には、特定の要件を満たす場合に税負担を軽減したり、将来に繰り延べたりできる特例制度があります。これらを理解し活用することで、税負担の軽減や、より計画的な不動産売却を実現することが可能です。

以下では、それぞれの特例や制度について、詳しく解説します。

法人が事業用資産を買い換える際、一定の要件を満たせば譲渡益への課税を将来に繰り延べられる「特定の事業用資産の買換えの特例」という制度があります。

国内にある長期所有資産の買換えなどが主な対象で、「圧縮記帳」という特別な会計処理を行うことにより、譲渡益の原則として80%相当額を上限に、その課税を効果的に先送りすることが可能です。

この特例を利用する主なメリットは、資産を譲渡した期の税負担を軽減し、事業に必要な資金が確保しやすくなる点です。しかし、これは税金が免除される「免税」ではなく、あくまで課税が将来の年度へ「繰延べ」られる制度であるという点に十分留意しなくてはなりません。

なお、この特例は令和8年(2026年)3月31日までに行われた譲渡が対象となる時限措置である点も覚えておきましょう。

買換え特例や圧縮記帳のより詳しい内容は、下記の関連記事を参考にしてください。

関連記事:圧縮記帳とは?|事業用不動産の買換え特例のメリット・デメリット

平成21年(2009年)または平成22年(2010年)に取得した国内の土地などを譲渡する場合、譲渡益から最大1,000万円まで控除される制度が利用できるかもしれません。これは過去の経済対策の一環で設けられた措置で、法人も適用対象です。

適用にはいくつかの要件があり、まず前述の期間に通常の売買などで取得したこと、譲渡時点で所有期間が5年を超えていること、そして収用などの特例や買換え特例などほかの特定の特例と併用しないことなどが主なポイントです。

要件を満たせば、譲渡益のうち最大1,000万円を損金として算入でき、課税所得を圧縮して法人税などの負担を軽減できます。特別控除の適用を受けるためには、法人税の申告書にその旨を記載するとともに、譲渡所得の内訳書や、対象となる土地などが平成21年または平成22年に取得されたことを証明する契約書類などを添付する必要があります。

なお、土地と建物を一括して譲渡した場合は、譲渡益を土地と建物に按分し、土地部分に対応する譲渡益に対してのみこの特別控除が適用されます。

出典:国税庁「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」

公共事業や都市計画など、公共の目的のために土地・建物を譲渡した場合、税負担を軽減する特例制度が用意されています。

代表的なものに、収用などのケースで譲渡益から最大5,000万円までの特別控除を差し引く特例や、代わりに別の事業用資産(代替資産)を取得したときに課税を将来へ繰り延べる「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」があります。

適用要件を満たせば、ふたつの特例のうち有利なものひとつを選択可能です。どちらを選ぶかは、代替資産の取得予定やその期の所得状況などを考慮して判断しましょう。

このほか、特定土地区画整理事業のための譲渡や、航空機騒音区域からの移転に伴う買換えなど、特定の状況下で利用できる類似の特例も存在します。

このように公共的な要因による譲渡では税負担軽減の可能性がありますが、各特例の適用には、資産の種類や事業計画など詳細かつ複雑な要件が定められています。どの特例が適用可能か、具体的な手続きを含め、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

出典:国税庁「 No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例」

出典:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

売却タイミングや売却益の使い道を戦略的に考えることで、税負担の軽減を図ることも可能です。

まず重要なのが、法人特有の損益通算の仕組みを活用した「売却タイミング」の選択です。不動産の売却損益は会社全体の損益と合算されるため、利益状況に合わせたタイミング選びが戦略の鍵となります。

利益が出る不動産は本業などで損失が見込まれる年度に売却すれば、損益を相殺し、法人全体の税負担を軽減できる可能性があります。逆に、損失が出る場合は、本業などで大きな利益が見込まれる年度に売却することで、課税所得を圧縮できます。

最適なタイミングを見極めるには、自社の損益予測や売却損益の見込み、適用税率などを総合的に検討し、また期を跨ぐ取引では利益計上時期(引渡し日基準または契約日基準)の選択も考慮に入れるべきでしょう。

くわえて、売却で得た資金の使途も将来への影響を考慮し、計画的に考えることが重要です。買換え特例などを除き、売却益の使い道に対する直接的な税制優遇はありませんが、将来の税負担や財務状況に影響を与えます。

例えば、新たな設備投資に充てれば将来の減価償却費が損金算入されます。また、借入金を返済すれば財務は改善しますが、支払利息の減少により課税所得は増加する可能性があります。配当も株主還元になりますが、法人側では配当金に対する源泉徴収と納付の義務が発生するほか、株主側でも配当所得として課税が生じるなど、別の税務課題が生じます。

このように、売却益の使途が将来の損益やキャッシュフローに与える影響を中長期的な視点で検討することが求められます。

法人の事業用不動産売却では、税額が大きく諸費用も多岐にわたります。関連する税金の仕組み、法人特有の損益通算や適用可能な特例制度などについての理解が不可欠です。

税務判断の誤りは予期せぬ納税という事態を招く場合があり、時限的な制度変更もあるため、最新情報の把握も求められます。したがって、不動産売却を進めるときは、専門知識に基づき個別の状況に応じた対応が重要です。税理士・会計士などの専門家へ相談し、綿密な計画に基づき意思決定を行うことが、売却を成功させ企業価値を守る道筋となるでしょう。

宅地建物取引士
佐藤 賢一 氏
Kenichi Sato

大学卒業後、不動産業界一筋。賃貸仲介・管理から売買仲介まで幅広い実務を経験した後、専門性を深め、プライム企業にて信託関連のオフィスビルや商業施設のAM・PM業務に従事。
現在は注文住宅会社の不動産部門責任者を務めつつ、多様な経験を活かし兼業ライターとしても活動中。不動産の実務から投資・管理戦略まで、多角的な視点に立った分かりやすい解説を得意としています。

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