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人件費高騰時代の不動産投資戦略|建築費高騰の動向と対応策とは

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人件費高騰時代の不動産投資戦略|建築費高騰の動向と対応策とは

昨今、国内の建設業界では建築費の高騰が続いており、不動産投資やCRE戦略に影響を与えています。この高騰の主因は、資材価格の上昇に加え、深刻な人手不足に伴う人件費(労務費)の急激な上昇にあります。
この人件費高騰は一過性のトレンドではなく、構造的かつ不可逆的な「新常態(ニューノーマル)」です。従来のコストリターン偏重の戦略はもはや機能しません。
こうした背景を踏まえ、現状をデータから客観的に検証し、「高騰を受け入れること」を前提に、人件費高騰時代を乗り切るための「開発戦略の変革」と「投資戦略の変革」という二つの柱に基づく具体的な対応策を提言します。
コストリターン戦略に依存する単一的なアプローチから脱却することで、持続可能な競争優位性を確立する新しいCRE戦略を築きましょう。

目次

  1. 【市況分析】データが示す「構造的な高騰」の正体
  2. 開発戦略の変革:高騰を吸収する新しい「建設」手法
  3. 投資戦略の変革:重視すべき新しい物件の選び方
  4. 人件費高騰時代を乗り越える:持続可能な不動産戦略を
【市況分析】データが示す「構造的な高騰」の正体

建築費は、なぜ継続的に高騰しているのでしょうか。また、なぜ建築費の高騰がCRE戦略の判断軸を見直す必要性を生じさせるのでしょうか。建築費高騰の要因を、データから読み解きます。

1. 深刻な人手不足がもたらす人件費の構造的高騰

建築費高騰の最大の要因は、少子高齢化によって生じた建設業界の人手不足に伴う人件費の上昇です。

全従業者数における建築業従業者数とその割合

出典:総務省統計局「労働力調査 産業別労働者データ」より

データによると、建設業従事者数および雇用者数に占める建設業従事者の割合は長期的な減少傾向を示しています。例えば、2002年には618万人(全従業者に占める割合9.76%)でしたが、その後は減少の一途を辿ります。2013年からは8%を割り込み7%台が常態化し、2025年(8月時点)は474万人(同6.95%)にまで減少するに至りました。

こうした人材の需給バランスの崩壊が、企業や業種間の人材獲得競争を激化させ、必要な人材を確保するための賃上げが避けられない状況を生み出しています。この「人手不足→賃上げ→人件費の高騰」というサイクルが、建築費を押し上げているのです。

さらに深刻なのは、これが短期的な景気変動による賃上げではなく、人手不足という構造的要因が引き起こす「恒常的なコスト増」であり、今後も是正される見込みは極めて低いという事実です。

2. 資材の高騰

人件費と並行して建築費を押し上げているのが、建築資材の価格高騰です。

建設総合指数の推移(全国)

出典:一般財団法人 建設物価調査会「建設物価 建設資材物価指数®」より

これは、円安の進行・地政学的リスク・世界的な資源需要の増加など、複数の要因が複雑に絡み合って発生していると考えられます。

一般財団法人 建設物価調査会のデータによると、2015年の建設総合指数を100と基準にした場合、2025年には平均値が141.9まで上昇しています。上昇幅は2021年や2022年頃に比べればやや緩やかになっているものの、依然として上昇傾向は続いています。

3. 法定福利費の増加によるコスト増

人件費の観点では、社会保険料などの法定福利費の増加も見逃せない要因です。

建設業界全体で社会保険への加入の適正化が進む中、従来は曖昧に扱われ、適正に計上されていなかった法定福利費が、明確なコストとして顕在化しています。

労働集約型産業である建設業では、賃金水準の上昇に加えて保険加入の徹底により、企業が負担する法定福利費も大幅に増加しています。そのため、増加した法定福利費は人件費として建築費に転嫁されるという構造です。

法定福利費の増加は、労働環境の改善につながる点で建設業従事者にとってプラスに作用する一方で、発注者、すなわち企業にとっては、避けられないコスト増として認識する必要があります。

関連記事:長期化する建築費高騰の影響と今後のシナリオ

開発戦略の変革:高騰を吸収する新しい「建設」手法

建築費の高騰が避けられない現状では、コスト上昇を前提とし、生産性の改善によってその増加分を吸収することが求められます。

そのためには、企業の不動産担当者が発注者として主導権を握り、明確な基準で建設パートナーを選定することが重要です。従来の建設手法とは異なる革新的なパートナーとの協業こそが、高騰する建築費を吸収するための重要な一歩となります。

1. デジタル技術の活用

労務費高騰という構造的な問題に対し、コスト耐性を強化するには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が欠かせません。ここでは、今後注目しておきたい建築業界のデジタル技術や取り組みを紹介します。

デジタル技術を積極的に取り入れることで、労務費の増加対策のみならず、LCC(ライフサイクルコスト)の削減にも役立てることが可能です。

・BIM(Building Information Modeling)の導入

BIMとは、設計段階で建物の3次元モデルにコストや維持管理情報までを統合するモデリング手法です。BIMの導入により、設計・施工段階での手戻りを大幅に削減し、資材の正確な把握を通じて無駄なコストや資材ロスを最小化できます。

とくに、BIMは企画・設計段階から完成後の建物のライフサイクル全体を想定できるため、初期コストの削減だけでなく、LCCを高い精度で把握できるようになります。

国土交通省もBIMの導入を積極的に主導・支援しており、この流れは国の政策によって加速しています。2026年春からは建築確認申請にBIMが段階的に導入される予定であり、BIMはもはや避けて通れない必須要件となりつつあります。

また、BIMの活用による削減効果はすでに立証されています。具体的な事例として、建物の設備更新周期をBIMでデータ化・可視化することで、更新・修繕に関わる社内決済業務量が45%低減した事例や、3Dデータ共有による現場調査業務の75%削減事例などが報告されています。

BIMは、建設と運用プロセス全体を通じて非効率な業務を劇的に削減し、人件費高騰時代において、欠かせない業務の中核を担う基盤といえます。

・建設現場の省人化の取り組み

建築費高騰の主因が労務費である以上、省人化できれば建築費の抑制は可能なはずです。そのため、省人化への取り組みも極めて重要なポイントです。

省人化への取り組みの一例として、国土交通省が推進する「i-Construction 2.0戦略」があります。これは、AI・IoTを活用し、建設現場の施工・データ連携・施工管理の3分野におけるオートメーション化を目指す施策です。目標は、2040年度までに省人化を少なくとも3割進め、生産性を1.5倍に向上させることとしています。

国土交通省が公表したデータによれば、起工測量からICT建機を用いた施工、3次元データの納品を活用することによって、20~30%の工期縮減効果があるとされています。

関連記事:進む「不動産×メタバース事業」。不動産DXの現状とは?

2. 建設工法の革新

デジタル技術と並んで重要なのが、建設工法そのものの革新です。現場作業を根本的に見直し、施工方法を効率化することで、人件費高騰の影響を最小限に抑えることができます。

・プレハブ化の推進

建物の構造体や一部を工場で事前製造する「プレハブ化」や「ユニット化」は、現場作業の標準化・単純化を通じて、労務費と工期を大幅に削減できる有効な手法です。

工場生産のメリットとして、現場での加工作業を大幅に削減できるほか、天候の影響を受けにくく品質が安定しやすいため、計画的な施工が実現します。結果的に、トータルコスト削減に繋がるでしょう。

・経済合理性の高い工法の選択

現場作業を最小化することで、人件費の削減につながり、トータルコストの減少にも直結します。そのためには、経済合理性に基づいた工法の選択が重要です。

具体例として、大規模修繕における無足場工法(ゴンドラ工法など)の採用があります。従来の足場設置と比較して、設置・解体の労務費を大幅に削減でき、工期の短縮にもつながります。同様に、新築・改修工事では、乾式工法やボルト接合技術を採用することで、現場での乾燥待機時間や加工作業を削減し、労務費を直接的に抑制できます。

人件費の削減には、デジタル技術の活用・工法の革新・規格品や標準品の採用など、多角的なアプローチによる「効率的な工期短縮」が不可欠です。

しかし、ここで重要なのは、「効率的」と「不当」の明確な区別です。時間外労働の上限規制(年720時間)が建設業にも適用され、いわゆる「2024年問題」が本格化したことで、発注者の法的リスクが従来よりも格段に高まっています。

これまでも、コスト削減を理由に建設業者へ不当な工期短縮を強要することは、建設業法および労働基準法に抵触する重大なコンプライアンス違反とされてきましたが、2024年4月以降、その判断基準はより厳格化しています。

時間外労働の上限規制が適用された現在、たとえ受発注者間で合意した工期であっても、それが違法な長時間労働を前提としていれば、客観的に「著しく短い工期(建設業法や労働基準法違反)」とみなされるのです。つまり、形式的な合意だけでは免責されず、行政からの勧告や指導の対象となるため、発注者はこれまで以上に実効性のある適正工期の設定が求められます。

国土交通省も、適正な工期設定を厳格に求める姿勢を強化しています。発注者には、法令遵守と適正な工期設定がこれまで以上に強く求められる時代となりました。

企業の不動産担当者が推進すべきは、法令を遵守し、労働者の安全と適正な労働環境を確保した上での戦略的な効率化です。この取り組みは、従来の「イニシャルコストをいかに抑えるか」という発想から脱却することを意味します。

建築費の高騰を前提として受け入れ、技術革新や工法改善によって生産性を向上させ、LCCの削減と不動産の付加価値向上を実現することこそが、新しい時代のCRE戦略の核心といえるでしょう。

出典:公益財団法人 日本建築情報技術センター「BIMとは?」

出典:国土交通省「令和4年度 BIMモデル事業 検証結果報告書」

出典:国土交通省「i-Construction 2.0~建設現場のオートメーション化~」

出典:国土交通省「i-Construction2.0~動き始めた建設現場の省人化~」

出典:一般社団法人 プレハブ建築協会「プレハブ建築について」

出典:国土交通省「工期に関する基準 概要」

投資戦略の変革:重視すべき新しい物件の選び方

人件費高騰時代において、企業は従来のコストリターン重視から脱却し、長期的な収益性と資産価値の維持を軸とした新しい物件選定・運営戦略に転換することが求められます。

・LCCを重視したCRE戦略への転換

建築費というイニシャルコストの高騰を受け入れる以上、将来的なランニングコストの最小化が一層重視されるため、CRE戦略においてはLCC(ライフサイクルコスト)を優先指標と位置付ける必要があります。

ライフサイクルコストについて詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

関連記事:不動産のライフサイクルコスト(LCC)とは?CRE戦略に欠かせないコスト管理と最適化の手法

・高効率設備・高断熱材への投資

高断熱材・高効率な空調システム・太陽光発電システムなどの省エネ設備投資は、初期費用が高くても、運用段階でエネルギーコストの大幅な削減につながるため、長期的に収益を安定させます。これらの投資は、単なるコストではなく、長期的なコスト削減のための戦略的投資と認識しましょう。

・IoT・AIによる事前察知体制

IoTやAIを活用した設備管理システムを導入することで、設備の異常を早期に検知し、適切なタイミングでの修繕(予知保全)が可能となります。これにより、突発的な高額修繕を回避でき、維持管理コストの最適化につながります。

従来の人的な管理体制では、給排水設備や空調機器の異常は発覚した時点で既に深刻な状況に陥っているケースも少なくありませんでした。しかし、デジタル管理を導入することで、機器の稼働状況を常時監視し、異常を予兆の段階で検知できるため、こうした手遅れの事態を未然に防ぐことが可能になります。

・既存物件の戦略的再評価と分散投資の重要性

新規開発コストが高騰している現状では、「保有物件を売却して新規物件に買い替える」という判断は、高騰した調達コストを考慮すると、経済合理性に欠ける場合があります。そのため、保有物件に対する出口戦略・再活用方針の見直しが求められます。

・リノベーション・コンバージョンの積極活用

既存物件に対してリフォーム・リノベーション・コンバージョン(用途転換)を行うほうが、トータルコストや工期、リスクの面でメリットが発生することがあります。既存物件の潜在的価値を最大限に活用するという視点が重要です。

・地方都市への分散投資の再認識

都心部と地方都市では取得コストに差があることから、地方都市への分散投資によるポートフォリオの見直しも重要です。都心部の開発リスクと高騰するコストを回避しつつ、地方都市ごとの賃貸需要や市場特性を的確に評価することで、投資ポートフォリオ全体のリスク分散と安定化を図ることができます。

また、都心部と地方都市では労務費にも差が生じています。2025年3月から適用されている公共工事設計労務単価によれば、普通作業員で比較すると、東京都が26,800円であるのに対して、鳥取県では17,900円と、日額8,900円もの労務費の差が生じています。

労務費は工事内容や工期、作業員のスキルなどによって異なり、一概に比較できないものの、地方都市における建築は都心部より安価な傾向にあるといえるでしょう。

とりわけ、特定の産業集積地や交通インフラが整備された地方都市では、安定した投資環境が整っており、地価上昇によるキャピタルゲインも期待できます。

関連記事:地方都市の投資戦略|データから見る将来性

人件費高騰時代を乗り越える:持続可能な不動産戦略を

人件費高騰は、日本において構造的な問題に起因する不可逆的なトレンドです。そのため、従来のCRE戦略の主流であるコストリターンから脱却し、持続可能な競争優位性の確保にシフトすることが求められます。具体的には「高い≒付加価値、将来的なコスト削減」という価値観といえるでしょう。

企業が取るべき戦略は三点に集約されます。第一に、LCCを最優先とした長期運用コスト最小化のための設備投資です。第二に、DX(BIMなど)に対応可能な業者を選定し、データの利活用によって管理コストを抑制することです。第三に、既存不動産を戦略的資源として再評価し、リノベーション等で資産寿命を延ばし、新規開発リスクを回避することです。

人件費高騰時代は、不動産を「総費用と長期価値」で判断する時代への変化でもあります。企業の不動産担当者は、この構造変化をチャンスと捉え、新しい価値観に基づく戦略を実行することで、企業の持続的な成長を支えることができるでしょう。

宅地建物取引士
佐藤 賢一 氏
Kenichi Sato

大学卒業後、不動産業界一筋。賃貸仲介・管理から売買仲介まで幅広い実務を経験した後、専門性を深め、プライム企業にて信託関連のオフィスビルや商業施設のAM・PM業務に従事。
現在は注文住宅会社の不動産部門責任者を務めつつ、多様な経験を活かし兼業ライターとしても活動中。不動産の実務から投資・管理戦略まで、多角的な視点に立ったわかりやすい解説を得意としています。

東急リバブル ソリューション事業本部では、最新の市場データを独自の視点で分析したレポート「不動産マーケットトレンド」を公開しています。

各方面への調査に基づいた本資料を、今後の不動産取引における判断材料としてぜひご活用ください。

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